酒は飲んでも飲まれるな!
よく聞く話ですよね。
今日は、お酒でやらかしてしまった、
正志くんの物語です。
飲み過ぎ注意喚起にも、
なるといいですね!
冬の冷たい風が会議室の窓を叩いていた。
朝10時、
新しいメニューの販売計画についての、
重要な会議が始まる予定だった。
主役である正志がまだ姿を見せていない。
上司の秋彦は、椅子に座りながら腕時計をちらりと見た。
時刻はすでに10時15分を過ぎている。
「あいつは何をしているんだ…」秋彦は資料を閉じ、深いため息をついた。
正志は、今回の新メニュー開発のリーダーだった。
営業成績が良く、社内でも評価が高い人材であった。
営業時代の功績が評価され、開発部でリーダーを任されることになった。
しかし、正志には欠点があった。
それは、異常な酒好きであるということだ・・・。
会議には、他の部下や関連部署のメンバーも参加しており、
数名がいらだちを隠せない様子で資料を見直している。
営業部の田村が小声でぼやいた。
「正志さん、また遅刻ですか?こんな大事な会議なのに…」
田村は、かつて、正志と同じ営業チームで働いていた。
正志の仕事ぶりと酒癖の悪さは、よく知っていた。
「本当ですよね。
これ、新商品の初期計画の全体像を決める会議なのに・・・
こんなふうに毎回邪魔されるなんて・・・」
総務の木村が嘆いた。
なぜこの会議に総務がいるのかは分からない。
なぜか、新メニュー開発会議に総務がいる。
これも、メーカーあるあるだ。
上司の秋彦は、何も言わず、静かに椅子に座り直した。
その表情は、苛立ちを超えた冷静さが漂っていた。
彼は正志が以前、優秀な新人だった頃の姿を知っている。
真面目で仕事熱心、周囲からの信頼も厚かった正志。
しかし、プライドが高くなり努力を怠るようになると、
彼の評価は急降下した。
それでも「かつて優秀だった」という肩書きに甘え、
非常識な行動が次第に増えていった。
そんな中、ドアが乱暴に開き、正志が会議室に飛び込んできた。
「すみません、遅れました!」
正志は息を切らし、顔を真っ赤にしていた。
しかし、その姿を見た瞬間、会議室全体が凍りついた。
彼の顔は赤らみ、目の下には濃いクマがあり、
酒の匂いが部屋中に漂った。
明らかに二日酔いの状態だった。
秋彦の表情は瞬時に厳しくなった。
「正志、理由を説明しろ。」
正志は視線を泳がせ、しどろもどろに話し始めた。
「えっと…昨夜、慶介に誘われて飲みに行ったんですけど・・・」
「慶介に誘われた?」
秋彦の声が一段高くなった。
「それが会議に遅刻する理由になるとでも思っているのか?」
「いや、その・・・」
正志は言葉に詰まり、周囲の視線に耐えられず俯いた。
「長引いたんですか?」
田村が呆れた声を出す。
「・・・はい、気がついたら朝の3時くらいで・・・」
正志は申し訳なさそうに答えたが、
部屋全体に広がったのはため息と失望感だった。
秋彦は資料を机に置き、冷静に問い詰めた。
「正志、君は会議の重要性が理解できていないのか?
これは新メニューの販売計画を決める大切な会議だ。
これを成功させるかどうかが、会社の来期の売上に直結するんだぞ。」
正志は苦笑しながら言い訳を続けた。
「でも、飲み会も仕事の一環じゃないですか?
皆さんだって、付き合いを大事にしろって言いますよね。」
「付き合いの飲み会が、朝3時まで飲む理由になるのか?」
秋彦の声がさらに鋭くなる。
「ましてや、その間にキャバクラにまで行ったと聞いたぞ。」
「いや、それは・・・」
正志はしどろもどろになりながら言い訳を続けた。
「正直、誘われたら断れない空気だったんです。
あの場にいたら、誰だって同じことをしてたと思います。」
その瞬間、慶介が静かに会議室に入ってきた。
正志は焦っていたため、会議室の扉を閉め忘れていたのだ。
内容がフロアに響き渡っていたらしい。
「正志さん、それは違います。
昨夜、確かに一緒に飲みに行きましたが、誘ったのは正志です。
それに、僕は夜11時には帰宅しました。
正志が『もう一軒行く』と言い出したので、それ以上は付き合えませんでした。」
慶介の冷静な証言に、会議室内の空気が変わった。
正志の嘘が明るみに出たことで、周囲の視線がさらに厳しくなる。
正志は苛立ちを隠せず、声を荒げた。
「俺ばかり責められるのはおかしい!こんなに叩かれるのは不公平だ!
みんなだって飲み会に行くことはあるじゃないですか?」
木村が皮肉を込めて口を開いた。
「でも、私たちは翌日に仕事があれば、朝まで飲んだりはしませんよ。」
「俺だって好きで飲みすぎたわけじゃない!」
正志はついに逆ギレした。
「みんなで楽しもうって空気だったし、場を盛り上げるのも仕事だろ!」
「だからお前たちは、仕事ができないんだ!」
その瞬間、会議室のドアが開き、社長の田島が入ってきた。
会議の進行を確認しに来た田島は、険悪な空気を察し、眉をひそめた。
「どうしたんだ?」田島の落ち着いた声が響く。
秋彦が状況を手短に説明すると、田島は正志に視線を向けた。
「正志、君がこの会議に遅刻した理由はなんだ?」
正志は動揺しながらも、口ごもった。
「その・・・飲み会が長引いて・・・」
「飲み会?」田島の声が冷たくなる。
「それでこの重要な会議を台無しにしたのか?」
「でも・・・」正志は必死に反論を試みる。
「飲み会だって仕事の一環だと思って参加したんです。
それに、僕だけが悪いわけじゃないんです!」
田島は深いため息をついた。
「君は何が問題なのか、まるで理解していないようだな。
正志、この会社において、責任感のない人間に居場所はない。
私たちはプロフェッショナルな集団だ。
このような態度が改まらないなら、解雇もやむを得ないと考えている。」
その言葉に会議室は静まり返った。
正志の顔は真っ青になり、言葉を失った。
田島は周囲を見回しながら静かに続けた。
「皆、これをよく覚えておいてほしい。
私たちは結果を出すために全力を尽くすべきだ。
それを妨げる行動は決して許されない。」
正志は椅子に崩れるように座り込んだ。
彼の目には恐怖と後悔が浮かんでいたが、もはや言い訳をする余裕もなかった。
この後、正志がどうなったかは、
ご想像にお任せします。
酒は飲んでも、飲まれるな。
ましてや、嘘なんてついてはいけません。
勉強になりました!
ありがとうございました。
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