AIで調査や資料作成は速くなったのに、仕事そのものはなぜ変わらないのか。『チェンジ・ザ・ルール!』の「技術とルール」の考え方から、生成AI時代に必要な仕事の前提の見直し方を、コンサル営業の実体験とともに考えます。
みなさんこんにちは!サラリーマンの大樹です!
AIを仕事で使うようになって、僕の仕事はかなり楽になりました。
特に変わったのが、
調査。
仮説構築。
ドキュメンテーション。
そして、0から何かを考える仕事です。
分からないことがあれば調べてもらえる。
考えがまとまらなければ壁打ちできる。
仮説をぶつければ、別の角度から考え直すきっかけも得られる。
以前より、意思決定までの準備を進めやすくなりました。
ところが、仕事をしていると一つ違和感があります。
意思決定そのものは、同じようには速くなっていない。
速くなったのは、その前です。
情報を集める。
考える。
整理する。
資料にする。
そうした準備の条件は大きく変わりました。
でも、最後に何を選ぶか。
顧客がどう判断するか。
人と人との間でどう合意するか。
そこまで同じように変わったわけではありません。
だとすると、
「AIを入れれば仕事が速くなる」
だけでは、少し雑なのかもしれない。
AIによって変わった仕事もあれば、まだ変わっていない仕事もある。
もっと言えば、
AIによって、存在する理由そのものが変わった仕事もあるかもしれない。
では、何を残して、何を変えるのか。
そのヒントになったのが、エリヤフ・ゴールドラットらの『チェンジ・ザ・ルール!』です。
AIについて書かれた本ではありません。
舞台となるのはERPなどのITシステム。
それでも、この本が投げかける問いは生成AI時代の今と驚くほど重なります。
この記事で伝えたいことは一つです。
AIで変えるべきなのは、今ある仕事の速さではない。その仕事を必要としてきた「前提」そのものです。
AIで仕事は速くなった。でも、それだけで仕事は変わったのか
AIで仕事を効率化する。
そう聞くと、多くの場合は、
今やっている仕事を、どうAIで速くするか
を考えます。
資料作成に使う。
情報収集に使う。
文章のたたき台を作る。
情報を整理する。
もちろん、それだけでも価値があります。
今までと同じ成果を、より短い時間で出せる。
立派な効率化です。
でも、もう一段戻ることもできます。
たとえば資料なら、
そもそも、なぜこの資料を作っているのか。
誰が読むのか。
何を判断するためなのか。
なぜこの形式なのか。
今も同じ情報量が必要なのか。
ここまで戻ると、問いが変わります。
「この資料をAIでどう速く作るか」
ではない。
「AIがある今、この資料はどうあるべきか」
になります。
前者は、今ある仕事を改善する発想。
後者は、今ある仕事を疑う発想です。
AIはどちらにも使えます。
だからこそ、
速くできることと、今もやるべきことを分けて考える。
これが重要だと思っています。
僕自身、AIで「準備」は速くなった。でも意思決定は速くなっていない
僕は現在、コンサルティングファームで営業をしています。
仕事でAIを使っていて、特に変化を感じるのが、
調査、仮説構築、ドキュメンテーションです。
営業では、顧客と話す前にも準備があります。
企業について調べる。
業界について調べる。
相手が抱えている可能性のある課題について仮説を作る。
考えを整理する。
それを資料や言葉に落とす。
このあたりは、AIによって進め方が大きく変わりました。
もう一つ大きいのが、壁打ちです。
0から何かを考えるときも、AIへ考えをぶつけられる。
「この仮説はどうか」
「違う見方はないか」
「抜けている論点はないか」
そうやって考えを前へ進められる。
AIが壁打ち相手になってくれることで、0から考える仕事の負荷も変わりました。
便利です。
でも、使えば使うほど、
AIが変えた仕事と、変えていない仕事の境目
も見えてきます。
僕の場合、意思決定までの準備は速くなりました。
一方で、
意思決定そのもののスピードは、それほど変わっていません。
情報を速く集められても、最後に何を選ぶかは決めなければならない。
顧客が判断することもある。
社内で合意する必要があることもある。
誰かが責任を持って決めることもある。
つまり、
AIによって「情報を集める」という制約は弱くなった。
「考える相手がいない」という制約も弱くなった。
でも、
意思決定に存在しているすべての制約が消えたわけではない。
この違いは大きい。
AIを使うこと自体を目的にすると、
「どの仕事をAI化できるか」
ばかり考えてしまいます。
でも、本当に見るべきなのは、
AIによって、どの前提が変わったのか。
なのだと思います。
そして、この違和感を整理するうえで、『チェンジ・ザ・ルール!』の考え方が非常に分かりやすかったのです。
『チェンジ・ザ・ルール!』が問うのは「ITを入れたか」ではない
『チェンジ・ザ・ルール!』は、『ザ・ゴール』で知られるエリヤフ・ゴールドラットらによるビジネス小説です。
本書で扱われるのは、ERPをはじめとするITシステム。
ただ、本当に重要なのはシステムの使い方ではありません。
本書が問うのは、
新しい技術を導入したのに、なぜ期待したほど成果が変わらないのか。
という問題です。
原題は、
Necessary But Not Sufficient.
「必要だが、それだけでは十分ではない」
という意味です。
このタイトルが、本書の思想を象徴しています。
技術は必要。
優れたシステムも必要。
でも、
技術を導入しただけでは、成果は自動的には変わらない。
なぜか。
組織には、その技術がなかった時代に作られた仕事のルールがあるからです。
あることができなかった。
だから、それでも仕事を成立させる方法を作った。
情報をすぐに扱えない。
だから、それを補う仕組みを作った。
人間や設備に制約がある。
だから、その制約に合わせて仕事を設計した。
ここで重要なのは、
昔のルールが間違っていたわけではない
ということです。
当時の環境では合理的だった。
むしろ、その制約の中で成果を出すために必要だった。
ところが、技術が進歩する。
以前できなかったことができるようになる。
制約が変わる。
それなのに、
制約へ対応するために作られたルールだけが残ったらどうなるか。
新しい技術を、
古いルールの中で使うことになります。
つまり、
技術は新しい。
仕事の前提は古い。
これでは、新しい技術が持っている可能性を成果へ変え切れません。
だから必要なのは、
技術の導入と同時に、その技術によって不要になった制約やルールを見直すこと。
ここまで考えて初めて、
「必要だが、それだけでは十分ではない」
という言葉の意味が見えてきます。
そしてこれは、ERPだけの話ではありません。
生成AIにも、そのまま当てはまります。
今の仕事には「昔できなかったこと」の名残がある
僕たちが毎日やっている仕事にも、必ず理由があります。
会議。
報告。
資料作成。
情報収集。
承認。
何の理由もなく生まれたわけではありません。
何かができなかった。
だから、それを補う仕事が生まれた。
情報をリアルタイムで共有できない。
だから、人を集めて共有する。
大量の情報を短時間で処理できない。
だから、誰かが先に整理する。
0から仮説を作るには人間が考えるしかない。
だから、そこへ時間を使う。
構造はシンプルです。
制約がある。
↓
その制約の中で成果を出すためにルールが生まれる。
↓
技術が進歩する。
↓
制約が弱くなる。
ここまでは自然です。
問題は最後です。
制約が変わったのに、ルールだけが残る。

この構造を直感的に理解するとき、僕が思い浮かべるのが映画『シン・ゴジラ』です。
作中では、これまで想定されていなかった事態に対し、既存の制度や手続きの中で対応しようとします。
ここでも、
「ルールが悪い」
という話ではありません。
そのルールが想定していた世界では、合理的だった。
問題は、
ルールが想定していた世界と、目の前の現実がズレたこと。
仕事も同じです。
昨日まで正しかったやり方が、突然間違いになるわけではない。
そのやり方を必要としていた世界が変わる。
だから見るべきなのは、
「このルールは古いか」ではなく、「このルールが想定した世界は今も存在するか」
なのだと思います。
生成AIは、仕事が前提としていた世界を変え始めています。
なら、仕事側も同じ場所に立ち続ける必要はありません。
AIの本当の価値は「昔の仕事を速くすること」だけではない
ここまで来ると、AIの見方も少し変わります。
たとえば調査。
これまでは、人間が情報を探し、読み、整理することに大きな負荷がありました。
AIによって、その負荷の一部が下がる。
そこで、
「同じ調査をもっと速くしよう」
と考えることもできます。
でも、もう一つ考えられる。
調査に使っていた時間が減ったなら、人間は何へ時間を使うべきなのか。
仮説を深めるのか。
顧客との対話へ使うのか。
判断へ使うのか。
あるいは、調査のやり方自体を変えるのか。
資料作成も同じです。
同じ資料を速く作るだけではない。
AIがあるなら、
そもそもどこまで人間が作る必要があるのか。
何を伝えれば十分なのか。
そこまで戻って考えられる。

これは、
「AIで効率化するな」
という話ではありません。
むしろ逆です。
AIの能力をもっと大きく使うために、
AIを使う対象そのものまで考える。
何をAIに任せるのか。
何を人間が続けるのか。
何を変えるのか。
何なら、もうやらなくていいのか。
AIを使う技術だけでは、ここまでは決まりません。
人間側が、
仕事の目的と、その仕事を生んだ制約
を理解する必要があります。
新しい技術が入った。
だから昔と同じ仕事が速くなった。
そこで終わらない。
新しい技術によって前提が変わった。
だから仕事そのものを見直す。
この一段先まで進むことが、『チェンジ・ザ・ルール!』の思想をAI時代へ持ち帰る意味だと思っています。
仕事を変えるなら「制約」まで遡って考える
では、自分の仕事をどう見直せばいいのでしょうか。
僕は、今ある仕事から直接「残す・やめる」を考えるより、4つの順番で遡ると分かりやすいと思っています。
1.WHY|なぜ、この仕事をしている?
最初に見るのは目的です。
たとえば、
「資料を作る」
ではなく、
「この資料によって、誰に何を判断してもらうのか」
まで戻る。
昔から作っている。
前回もこの形式だった。
それは、目的ではありません。
2.LIMIT|何ができなかったから、この仕事が必要だった?
次に、その仕事が生まれた理由まで遡ります。
情報共有が難しかったのか。
情報処理に時間がかかったのか。
人間が0から考えるしかなかったのか。
データが取れなかったのか。
ここで見るのは、
仕事ではなく、その仕事を生んだ制約です。
3.NOW|その制約は今もある?
そこで初めて、現在の技術を見る。
昔できなかったことが、今はできないか。
僕の場合なら、
調査。
仮説構築。
ドキュメンテーション。
壁打ち。
このあたりはAIによって前提が変わりました。
一方、意思決定そのものまで同じように変わったとは感じていません。
だから、
全部を変える必要もない。
全部を残す必要もない。
変わった制約と、残っている制約を分ける。
4.REDESIGN|今ならどうする?
最後に仕事を決め直します。
選択肢は三つ。
続ける。
目的も必要性も残っている。
なら続ける。
変える。
目的は残っている。
でも、方法は今の技術に合わせられる。
なら変える。
やめる。
仕事を必要にした理由そのものがなくなっている。
なら、やめることも考える。

この順番で考えると、
「AIで何ができるか」
から仕事を考えなくて済みます。
先に仕事を見る。
その仕事の目的を見る。
制約まで遡る。
そのうえでAIを見る。
僕自身の仕事でも同じです。
調査の制約が変わった。
仮説構築の制約が変わった。
壁打ちの制約が変わった。
なら、その変化を前提に仕事の進め方を考え直せる。
一方で、意思決定の制約が残っているなら、そこまで変わったことにはしない。
技術に仕事を合わせるのではなく、目的に合わせて技術を使う。
これが、新しい技術を単なる効率化で終わらせないための考え方だと思います。
そして、その土台にあるのが、『チェンジ・ザ・ルール!』が示す、
技術だけでは十分ではない
という考え方です。
古い仕事だからといって、捨てればいいわけではない
ここまで読むと、
「昔からある仕事は全部疑った方がいい」
と感じるかもしれません。
でも、そうではありません。
たとえば、名刺交換。
デジタルで連絡先を交換できる今、紙の名刺は古く見えます。
でも僕は、
「だから名刺交換はいらない」
とは言い切れません。
最初に名乗る。
相手の会社や役職を知る。
名刺があることで、相手について知ろうと思うきっかけにもなる。
そうした役割があるかもしれないからです。
つまり、見るべきなのは、
紙かデジタルかではありません。
その行為が果たしている役割が、今も必要か。
必要なら残せばいい。
目的は残っていて、方法だけ変えられるなら変える。
役割そのものがなくなったなら、やめる。
「AIが使えるからAIにする」
と、
「昔からやっているから続ける」
は正反対に見えます。
でも、目的を見ていなければ同じです。
新しいか、古いか。
人間か、AIか。
それだけで決めない。
今の目的に必要かどうかで決める。
だからこそ、
『チェンジ・ザ・ルール!』というタイトルの「ルールを変える」を、
「古いものを壊すこと」
と捉えない方がいいと思っています。
必要なのは、
ルールが生まれた理由を理解して、その理由が今も残っているかを確かめること。
それなら、残すという判断も立派なルール変更の思考です。
明日、AIを開く前に「なぜこの仕事をしている?」と一度だけ問う
明日から業務プロセスを全部変える必要はありません。
AI活用の大きなプロジェクトを始める必要もない。
やることは一つです。
仕事でAIを使おうとしたとき、
「なぜ、この仕事をしている?」
と一度だけ自分に聞いてみる。
資料なら、
何を判断してもらうためなのか。
調査なら、
何を知るためなのか。
会議なら、
何を決めるためなのか。
そのうえで、
「この仕事を必要にした制約は、今も残っている?」
と考える。
残っているなら続ける。
前提が変わっているなら方法を変える。
必要性そのものがなくなっているなら、やめることも考える。
AIを開いてから、
「どう効率化する?」
と考えるのではなく、
AIを開く前に、
「そもそも何のための仕事だ?」
と考える。
まずは、それだけでいいと思います。
まとめ|技術が変わったなら、仕事の「前提」まで疑う
『チェンジ・ザ・ルール!』は、AIについて書かれた本ではありません。
それでも今読む価値があるのは、
技術を変えるだけでは十分ではない
という問題が、生成AI時代にも残っているからです。
僕自身、AIによって調査や仮説構築、ドキュメンテーション、壁打ちのやり方が変わりました。
一方で、意思決定そのものまで同じように速くなったわけではありません。
だから見るべきなのは、
AIを使っているかどうかではない。
AIによって、何の前提が変わったのか。
昔の制約が残っているなら、仕事を残す。
制約が変わったなら、仕事も変える。
制約そのものがなくなったなら、やめることも考える。
技術が変わったなら、ルールも変える。
その前に、
なぜ、そのルールが必要だったのかを考える。
AIで変えるべきなのは、今ある仕事の速さではありません。
その仕事を必要としてきた「前提」そのものです。
明日、AIを開く前に一度だけ問いかけてみてください。
「そもそも、なぜ僕はこの仕事をしているんだろう?」



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